トピックス
  2013年度トピックス

総額表示義務の緩和(13.12.01)
経営改善設備を取得した場合の特別償却・税額控除(13.11.01)
創業補助金(13.10.01)
教育資金一括贈与の非課税制度(13.09.01)
小規模宅地等の評価減の改正(13.08.01)
相続税の基礎控除額引き下げ(13.07.01)
住宅ローン減税の拡充・延長 (13.06.01)
雇用促進税制の拡充(13.05.01)
所得拡大促進税制の創設 (13.04.01)
接待交際費等の控除限度額の拡充 (13.03.01)
平成25年度税制改正大綱(自由民主党・公明党)(13.02.01)
復興特別所得税の源泉徴収開始時期(13.01.01)

総額表示義務の緩和
 平成26年4月及び平成27年10月に2回にわたり消費税率が引上げられる予定ですが、この引上げに際し、消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保することを目的として、平成25年6月5日に、「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」が成立しました。今月はその中で、価格表示に関する特別措置についてご紹介いたします。

<概要>

 現在、消費者に商品の販売やサービスの提供を行う課税事業者には、消費者に対する「値札」や「広告」などにおいて価格を表示する場合に、消費税相当額を含んだ支払総額の表示をしなければならない、総額表示義務があります。※免税事業者や事業者間の取引には総額表示義務はありません。
しかし、消費税増税により、事業者の値札の変更等でのコスト増や事務負担を軽減するため、今回の特別措置法の成立で、総額表示ではなく、外税表示も一時的に認められることとなりました。また、税込価格に併せて、税抜価格を表示する場合、税込価格が明瞭に表示されているときは、景品表示法第4 条第1項(不当表示)の規定は適用しないこととされました。

<総額表示、外税表示の例>
(総額表示の例)   

 (外税表示の例)

10,800円(税込)
10,800円(税抜価格10,000円)
10,800円(うち消費税額等800円)

特例
10000円(税抜)
10000円+税
10000円+800円(税)

 このように総額表示から外税表示の表示が認められました。
ただし、外税価格で表示する場合は、「現に表示する価格が税込価格であると誤認されないための措置を講じている」という要件を満たす必要がありますので、店内の目立つ場所に「当店の商品は全て税抜表示となっております。」等の表示をする必要もあります。

<適用期間>

 当特別措置法の適用は平成25年10月1日から平成29年3月31日までとなります。消費税増税時期の平成26年4月1日以前より適用が認められますので、余裕をもって準備に取り掛かることが最善です。

担当 櫻井 賢宏

経営改善設備を取得した場合の特別償却・税額控除
 今月は経営革新等支援機関を利用した、経営改善設備を取得した場合の特別償却・税額控除についてご紹介させていただきます。

<制度の概要>

 平成25年1月1日から平成27年12月31日までの期間に、経営革新等支援機関から経営改善に関する指導及び助言を受けて、一定の設備投資を行った場合に、その取得価額の30%の特別償却又もしくは取得価額の7%の税額控除を受けられる制度となります。適用を受けるための要件は以下の通りです。

<制度の適用要件等>

適用対象者
青色申告書を提出する商業・サービス業及び農林水産業を営む中小企業者
 個人:常時使用する従業員の1,000人以下の個人事業主
 法人:資本金の額が3,000万円以下である法人(特別償却を受ける場合は資本金1億円以下まで可)

適用期間
平成25年4月1日〜平成27年3月31日までの期間に行われた設備投資

適用対象資産
1台又は1基の取得価額が30万円以上の器具備品
一の取得価額60万円以上の建物附属設備
※新品が対象となり、中古品は対象とはなりません。

適用要件
経営革新等支援期間から経営改善に関する指導及び助言を受けて設備投資を行い、事業の用に供すこと

税制措置
取得加賀の30%の特別償却 もしくは 取得価額の7%の税額控除
※税額控除は税額の20%が限度額になります。
※限度額を超えた場合には1年間の繰越が可能です。

 この制度は経営革新等支援機関からアドバイスを受けることが条件となっています。当事務所は経営革新等支援機関に認定を受けておりますので、設備投資を検討される場合には事前にご相談をお願い致します。

担当 高橋 将史

創業補助金
 今月は、起業・創業等を行う個人、中小企業者に対して交付される創業補助金についてご紹介いたします(今回で第3回目の募集となります)。

<補助金の概要>

 地域の需要や雇用を支える事業を興す起業・創業や既に事業を営んでいる中小企業・小規模事業者において後継者が先代から事業を引き継いだ場合などに業態転換や新事業・新分野に進出する第二創業、また、海外市場の獲得を念頭とした事業を興す起業・創業を支援するため、人件費や広告宣伝費等の特定の経費の一部を補助する補助金です。

<補助対象者>

@地域の需要や雇用を支える事業を興す起業・創業[地域需要創造型起業・創業]を行う者
 ※平成25年3月23日以降に個人開業又は法人の設立を行う者
A既に事業を営んでいる中小企業・小規模事業者において後継者が先代から事業を引き継いだ場合など、事業転換や新事業・新分野に進出する[第二創業]を行う者
B海外市場の獲得を念頭とした事業を興す起業・創業[海外需要獲得型起業・創業]を行う者
 ※国が認定する専門家などの助言機関(認定支援機関たる金融機関等)と一緒に取り組む必要があります。

<補助内容>

 弁護士、税理士などの専門家との顧問契約のための費用や広告費等、人件費、設備費等、創業及び販路開拓に必要な経費に対して以下の補助率、補助上限に基づき補助をされます。
 ※対象となる経費に関してはそれぞれ要件があり、対象とならないものもあります。

  補助率 補助上限額
域需要創造型起業・創業 補助対象経費の
3分の2以内
100万円以上〜200万円以内
第二創業   100万円以上〜500万円以内
海外需要獲得型起業・創業   100万円以上〜700万円以内

<募集期間(第3回)>

平成25年9月19日(木)〜 平成25年12月24日(火)【当日必着】
 ※なお、10月21日(月)までに受付した案件については、先行して審査を実施します。
  10月22日(火)以降の受付分につきましては、応募状況に応じて審査を行います。

<補助金申請から交付後までの流れ>

 当補助金の申請には上記補助金対象者に該当するうえ、国が認定する認定支援機関(認定支援機関登録税理士、弁護士、金融機関等)の支援を受け、各都道府県に事業計画等を作成・提出し、審査委員会の審査が通った事業者のみが交付対象となります。また、交付が決定した以後も事業の完了報告や5年間事業化状況を報告する必要があります。一連の流れは以下のとおりです。


 以上のように、新規創業、第二創業の事業者にとっては大変有意義な補助金となっております。
 当事務所も認定支援機関の承認を受けておりますので、該当する創業者の方で興味がありましたら是非ご相談ください。

担当 櫻井 賢宏

教育資金一括贈与の非課税制度
 今月は平成25年度税制改正のうち、新しく創設された教育資金一括贈与の非課税制度についてご紹介いたします。

<制度の概要>

 平成25年1月1日から平成27年12月31日までの期間に、30歳未満の個人が、直系尊属(叔父、叔母、兄弟は対象外)から教育資金に充てるため、教育資金口座の開設等により贈与をした場合に、その贈与された金額のうち1,500万円(学校等以外に支払う金銭については500万円)を限度として贈与税が非課税となる制度です。
 子供の教育費に頭を悩ませる若い親世代にとっては、祖父母からまとまった金額で祖父母から教育資金を非課税で援助してもらえるため注目されている制度です。

<対象となる教育資金と限度額>

 この制度では教育資金と認められるものだけが非課税となり、教育資金以外の用途で使用した場合には通常の贈与として課税対象となります。また、非課税の限度額は、学校等に直接支払われる費用については1,500万円までとなりますが、業者に支払う場合には限度額は500万円となります。そのため、学校等で使用する教科書等であっても業者に直接支払われる場合には限度額500万円に該当することになるため注意が必要です。

教育資金に該当するもの

• 小学校・中学校などの学校等に直接支払われる入学金、授業料、入学試験料の費用
• 学用品の購入、修学旅行費、給食費等の学校等における教育に必要な費用
• 学校の寮費
• 学習塾や習い事の費用
※Cの場合は、学校等に該当しないため限度額は500万円となります。

教育資金に該当しないもの
• 大学の下宿代
• 留学の渡航費、滞在費
• 一般の書店で購入した参考書(学校等が必要と認めたものを除く)
• 個人で購入した部活動で使用する道具等の費用(指導を行う者を通じて購入するものを除く)

<注意点>

 贈与を受ける個人が30歳に達するなどにより、教育資金口座の契約が終了した場合で口座に残額が残っている場合には、その年に贈与があったこととして贈与税が課されることになります。
 現在は公立の学校であれば高校までは実質無償で、学校等へ直接支払う金銭が1,500万円まで達せず、限度額が500万円である学習塾や習い事などは費用がかさみ早い時期に使い切ってしまうなどの状況になることが考えられます。
 また、祖父母世代が健康で家計に余裕があったとしても、この先の老後の生活にいくらかかるかは不透明です。一括で贈与してもらうのが良いのか、その都度できる範囲で援助してもらうのが良いか、良く検討した上でこの制度を利用することが賢明といえます。

担当 高橋 将史

小規模宅地等の評価減の改正
 今月は平成25年度税制改正のうち、相続税の小規模宅地等の評価についての特例制度の見直しについてご紹介いたします。

<小規模宅地等の評価減の概要>

 大まかに相続税は相続財産の課税価格を算定し、そこから基礎控除を差し引いた金額から相続税額を算定して、各相続人が納税することとなります。
小規模宅地等の評価減の特例は、その課税価格の算定において相続財産を金額に換算しますが、土地等の評価額が高くなってしまい、相続税の納税のために土地等を手放さなければならないケースを防ぐために、その課税価格を一定の要件のもと一定割合減額できるという制度です。適用面積、減額割合は以下の通りです。※表は改正前のものです。

小規模宅地 限度面積 減額率
居住用宅地 特定居住用宅地 240u 80%
事業用宅地 特定事業用宅地 400u 80%
動産貸付業の事業用宅地 特定同族会社事業用宅地 400u 80%
  その他の貸付事業用宅地

200u 50%


<改正項目>

@ 居住用宅地の適用面積を240uから330uに拡充する。
A 限定的に併用が認められていた特定居住者用宅地等と特定事業用宅地等については、それぞれの適用面積まで完全併用に拡大する。
B 二世帯住宅について、建物内部で二世帯の居住スペースがつながっていなくても適用対象とする。
C 被相続人が老人ホームに入居し、空き家となっていた家屋の敷地でも一定の条件を満たせば、適用対象とする。

<改正の趣旨>

 先月のトピックスで取り上げました相続税の基礎控除の引き下げ等の改正により、相続納税者の税負担が増加することから、その見返りとして小規模宅地等の課税価格の計算特例について、大幅に緩和することとしたものです。
 また、二世帯住宅や推定被相続人が老人ホームに入居した場合の同特例の適用について問題視されていた点につきましても、合せて見直されています。

<ケーススタディ>

  自宅の敷地が500u(特定居住用宅地の要件に該当)、相続評価額が3億円の場合
「現在」 小規模宅地等の特例を適用したときの評価引下げ額11,520万円
3億円÷500u×240u×80%=11,520万円
「改正後」 小規模宅地等の特例を適用したときの評価引下げ額15,840万円
3億円÷500u×330u×80%=15,840万円

 以上のように改正後は評価引下げ額が4,320万円増加します。
改正により相続税の基礎控除額が下がり、申告の対象となる方も当制度の適用により税額が下がります。但し、当制度は申告をしないと適用できないものになりますので、当制度適用により納付額が0円となった方でも必ず申告が必要となります。

<適用時期>

 改正項目@、Aの改正は平成27年1月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税について適用し、改正項目B、Cの改正は平成26年1月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税について適用されます。

担当 櫻井 賢宏

相続税の基礎控除額引き下げ
 今月は平成25年度税制改正のうち、相続税の基礎控除額引き下げについてご紹介いたします。

<概要>

 相続税は、親族などが亡くなったことにより財産を前の代から受け継いだ場合等に発生する税金です。
この相続税ですが全てのケースで相続税が発生するのではなく、相続する財産の総額が一定額(基礎控除額)を超える場合のみ、申告して相続税を納めるという仕組みになります。今回改正では、平成27年1月1日以降に発生した相続について、この基礎控除額が引き下げられることが決定しました。従来では相続税の納付義務が発生するのは100人中約4名と言われておりましたが、改正後は倍増する見通しです。そのため、今まで相続税とは無縁だった方でも、相続対策の必要性が出てくる可能性があります。


<基礎控除額の改正>

 今回の改正により平成27年1月1日以降の基礎控除額が現行の60%に引き下げられます。

現 行 5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)
改正後 3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

 法定相続人が、配偶者1名と子供2名の合計3名の場合では基礎控除額は以下の通りです。
現 行 5,000万円+(1,000×3名)=8,000万円
改正後 3,000万円+(600万円×3名)=4,800万円


  よって、改正後では基礎控除額が3,200万円減少することになります。

 上記のケースで亡くなった人(被相続人)が以下のような財産を所有していていた場合には、従来では相続税の対象にはなりませんでしたが、改正後は相続税の申告が必要となってきます。   
  最後になりますが、「配偶者控除」や「小規模宅地等の特例」などの制度を利用することで申告のみを行い、税金は発生しない場合もあります。贈与・相続をご検討される場合には、お早めに担当者にご相談ください。

担当 高橋 将史

住宅ローン減税の拡充・延長
 平成25年税制改正法が3月29日に成立しました。今月はそのうちの住宅ローン減税の拡充・延長についてご紹介いたします。

<改正の主な概要>

・平成25年度末で終了予定の現行制度が4年間延長
・平成26年4月より各年の控除限度額を20万円から40万円に引き上げ
 ※認定住宅(認定長期優良住宅及び認定低酸素住宅)については30万円から50万円に引き上げ
・平成26年4月より10年合計の最大控除可能額を200万円から400万円に引き上げ
 ※認定住宅(認定長期優良住宅及び認定低酸素住宅)については300万円から500万円に引き上げ
・所得税から控除しきれなかった額の住民税からの控除が限度額97,500円から136,500円へ増額
・自己資金で住宅を購入した場合の控除限度額を50万円から65万円に引き上げ

下記表は認定住宅以外の住宅を購入した場合の住宅ローン減税の変更内容となります。

居住開始
年月日
年末残高の
限度額
控除率 各年の
控除限度額
最大控除
可能額
控除期間 住民税からの
控除限度額
現在
(平成25年) 
2,000万円 1% 20万円 200万円 10年 所得税の課税所得金額×5%
(最高9.75万円)
平成26年
1〜3月
2,000万円 1% 20万円 200万円 10年 所得税の課税所得金額×5%
(最高9.75万円)
平成26年4月〜
平成29年12月
4,000万円 1% 40万円 400万円 10年 所得税の課税所得金額×7%
(最高13.65万円)


<改正の目的>

 住宅取得については取引価格が高額であり、平成26年4月からの消費税増税に伴う住宅取得者の負担を軽減するため、また、消費税増税による駆け込み需要及びその反動を抑えるためと言われています。

<シミュレーション>

 平成25年度中に居住を開始した場合と消費税増税後に住宅購入及び居住を開始した場合とで消費税増税による負担増加額と今回の改正(各年の控除限度額が20万円から40万円に増加、及び住民税からの控除限度額の増額)が行われた場合の減税増加額による家計負担増加額を各、所得・借入額別に試算しました。

【ケース@】
・年収:500万円 ・家族構成:配偶者1人・16歳以上扶養親族1人 
・借入金額:2,500万円(返済期間35年、元金均等返済) 
・住宅及び土地取得価格:3,000万円(住宅価格1,800万円) 

@ 年収 500万円
A 借入額 2,500万円
B 住宅価格 1,800万円
C 消費増税による負担増加額 B×3% 約54万円
D 各年の控除限度額20万円から40万円への引き上げ、
及び住民税からの控除限度額増額に伴う減税増加額(10年合計)
約21万円
E 家計負担増加額 C−D 約33万円

【ケースA】
・年収:800万円 ・家族構成:配偶者1人・16歳以上扶養親族1人
・借入金額:4,000万円(返済期間35年、元金均等返済) 
・住宅及び土地取得価格:4,500万円(住宅価格2,700万円)

@ 年収 800万円
A 借入額 4,000万円
B 住宅価格 2,700万円
C 消費増税による負担増加額 B×3% 約81万円
D 各年の控除限度額20万円から40万円への引き上げ、
及び住民税からの控除限度額増額に伴う減税増加額(10年合計)
約153万円
E 家計負担増加額 C−D 約−72万円

 実際の年収に対する借入金額、住宅価格等の金額は各家庭により異なりますので、一概には言えませんが、上記試算から【ケース@】年収500万円の家庭では、消費税増税後に住宅購入・居住した場合は、消費税増税による負担額54万円から住宅ローン減税の改正による減税額21万円を相殺しても約33万円の負担増となり消費税増税前に住宅購入・居住した方が有利となります。
 一方【ケースA】年収800万円の家庭では、消費税増税後に住宅購入・居住した場合は、消費税増税による負担額81万円から住宅ローン減税の改正による減税額153万円を相殺すると約72万円得する計算となり、消費税増税後に住宅購入・居住した方が有利となります。
 以上の結果、年収が高額な家庭は当改正による恩恵を受けることができますが、住宅ローン利用者の最も多いといわれる年収400万円〜600万円の家庭においては消費税増税前に住宅購入・居住した方が負担は少なくなる計算となります。 ただし、当改正においては遅くとも今夏までに住宅ローン減税の拡充措置を講じてもなお効果が限定的な所得層に対して適切な給付措置を講じることも盛り込まれておりますので今後の税制改正で収入の差による当改正の恩恵の格差はなくなる可能性もあります。

担当 櫻井 賢宏

雇用促進税制の拡充
 平成25年税制改正法が3月29日に成立しました。今回は雇用促進税制の改正内容をご案内させていただきます。なお、この雇用促進税制は先月ご紹介した「所得拡大促進税制」との選択適用となります。

<改正内容>

  雇用者(雇用保険一般被保険者)増加数が2人以上(大企業は5人以上)等の一定の要件を満たす場合に、受けられる税額控除額が雇用増加数1人あたり40万円(現行20万円)に引き上げられます。なお、法人税額の20%(大企業は10%)の控除限度額については従来と変更はありません。適用事業年度は、平成25年4月以降に開始する事業年度が対象となる見通しです。

<適用要件>

雇用促進税制の税額控除を受けるためには、以下の5つの要件をすべて満たす必要があります。

@ 前期及び当期に事業主都合による離職者がいないこと
前期及び当期にリストラ等の会社都合による離職者がいる場合であり、従業員の自己都合による退職は問題ありません。

A 基準雇用者数が2人以上(大企業は5人以上)であること
基準雇用者数とは、当期末の雇用者数から前期末の雇用者数を引いた人数になります。
また雇用者とは、法人の使用人のうち雇用保険の一般被保険者のことで、役員は除かれるほか、従業員であっても役員の親族など役員と特殊関係にある者等は除かれます。

B 基準雇用割合が10%以上であること  
基準雇用割合とは、基準雇用者数を前期末の雇用者数で除した数です。

C 給与等支給額が比較給与等支給額以上であること
給与等支給額とは、当期の給与の支給額です。
比較給与等支給額とは、次の算式により計算した金額です。
 前期の給与等の支給額+(前期の給与等の支給額×基準雇用者数割合×30%)

D 雇用保険の適用事業を行っていること
風俗業などの事業は適用対象外となります。

<ケーススタディ>

事業拡大のため、中小企業が期首に従業員を新規2名採用した場合を紹介します。

前期末 当期末
雇用者数:10名
給与等の支給額:30,000,000円
雇用者数:12名
給与等の支給額:36,000,000円

@ 事業主の離職者がいないこと、及び、D雇用保険の適用事業であることを前提とします。

A 基準雇用者数
今回の基準雇用者数は、12名−10名=2名 となり2名以上のため要件を満たします。

B 基準雇用割合
上記で計算した基準雇用者数の2名を前期末の雇用者数10名で除します。
2名÷10名=0.2=20% となり10%を超えるため要件を満たしています。

C 給与等支給額の比較
給与等支給額は、36,000,000円です。
比較給与等支給額は、Bの基準雇用割合20%を利用して計算します。
 30,000,000円+(30,000,000円×20%×30%)=31,800,000円
給与等支給額が比較給与等支給額以上のため要件を満たします。

 上記の通り、全ての要件を満たした場合には、2名×40万=80万円(法人税額の20%が上限)の税額控除が受けられることになります。

 実際にこの雇用促進税制の適用をご検討される場合には、事前に担当者までご連絡いただくようお願い致します。

担当 高橋 将史

所得拡大促進税制の創設
 平成25年1月24日に発表された「平成25年度税制改正大綱」は年度内成立に向け審議が進んでおり、まもなく成立する見込みです。今回ご案内させていただくのは、その税制改正の1つで今回から新設される「所得拡大促進税制」になります。

内容

 平成25年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する各事業年度において、雇用者(役員及び役員の親族等を除く)に対する雇用者給与等支給増加額について、一定の要件を満たした場合、その増加額(当期の雇用者給与等支給額から基準事業年度の雇用者給与等支給額を控除した金額)の10%を税額控除することができます。控除限度額は、当期の法人税額の10%(中小企業者等は20%)となります。
 対象は法人だけでなく、個人事業主であっても所得税に対して適用が可能です。(個人事業主の場合は、平成26年〜28年が適用事業年度になります。)

適用要件

所得拡大促進税制の税額控除を受けるには、以下の3つの要件をすべて満たすことが必要です。

(1)雇用者給与等支給額が基準事業年度の雇用者給与等支給額と比較して5%以上増加していること
 基準事業年度とは、平成25年4月1日以後に開始する各事業年度のうち、最も古い事業年度の直前の事業年度をいいます。
(例)3月決算の法人の場合は、平成24年4月1日〜平成25年3月31日が基準事業年度になります。

(2)雇用者給与等支給額が前事業年度の雇用者給与等支給額を下回らないこと
 
(3)平均給与等支給額が前事業年度の平均給与等支給額を下回らないこと
 平均給与等支給額とは、従業員1人あたりの給与等支給額です。当期の平均給与等支給額が前事業年度の平均給与等支給額以上であることが必要です。

ケーススタディ

3月決算の中小企業で具体的にご紹介します。

項目 平成24年度(基準年度) 平成25年度
雇用者給与等支給額 3,000万円 3,410万円
雇用者数 10名 11名
平均給与等支給額 300万円 310万円

(1)基準事業年度との比較
 (3,410万円−3,000万円)÷3,000万円=13.666…%≧5%

(2)前年の雇用者給与等支給額との比較
 3,410万円≧3,000万円

(3)平均給与等支給額の比較
 310万円≧300万円

 3つの要件すべてを満たしている場合には、増加額の10%である41万円の税額控除が適用されます。
(3,410万円−3,000万円)×10%=41万円
※当期の法人税額の10%(中小企業者等は20%)が上限となります。

雇用促進税制との選択適用

 この所得拡大促進税制は雇用促進税制との重複適用は認められません。雇用促進税制とは、雇用者を5人以上(中小企業は2人以上)増加した場合等の一定の要件を満たす場合に、1人当たり40万円(現行20万円)の税額控除が受けられる制度です。
 雇用者給与等支給額が増加するケースとして、新規雇用による増加が挙げられますが、この場合所得拡大促進税制と雇用促進税制の両方の要件を満たす可能性があります。しかし重複適用が認められないため、どちらの制度が企業にとってメリットが大きいかを判断し、選択しなくてはなりません。このような場合には、事前届出が必要である雇用促進税制の手続きを進めた上で、決算時にどちらが有利になるかを検討していくことが望ましいと言えます。

担当 高橋 将史

接待交際費等の控除限度額の拡充
 平成25年1月24日に発表された「平成25年度税制改正大綱」で中小企業対策の1つである接待交際費の改正をご案内させていただきます。

改正内容  

 「交際費等の損金不算入制度における中小法人(資本金1億円以下)に係る損金算入の特例について、定額控除限度額を800万円(現行600万円)に引き上げるとともに、定額控除限度額までの金額の損金不算入措置(現行10%)を廃止するという内容になります。
 つまり、従来では年間で1,000万円の交際費として使用した場合には、上限の600万円を超える400万円と600万円の10%にあたる60万円の合計460万円が費用として認められませんでした。しかし、今回の改正後では費用として認められないのは800万円を超える200万円部分のみとなります。また、800万円を超えなければ全額が費用として認められることになり、上手に活用することにより税負担の軽減が可能となります。

 適用時期は2013年4月以降に開始する事業年度から対象になる見通しです。

 最後になりますが、今回の改正は中小企業が対象となっております。大企業(資本金1億円超)は交際費全額が損金不算入、個人事業主は事業に関係する交際費は全額が損金算入可能で、従来からの変更はありません。

担当 高橋 将史

平成25年度税制改正大綱(自由民主党・公明党)
 自由民主党、公明党両党が1月24日に「平成25年度税制改正大綱」を発表しました。下記に税目ごとにポイントをまとめました。

1.法人税

項目 内容 適用時期
中小企業交際費
(減税)
 定額控除限度額を800万円に引き上げるとともに(現行600万円)、定額控除限度額までは全額が損金算入となる(現行は10%は損金不算入) H25.4.1以降開始の各事業年度
給与支給を拡充
(減税・新設)
 青色申告法人が、国内雇用者に対して給与等を支給する場合、下記算式の割合が5%以上であるときは、雇用者給与等支給増加額の10%の税額控除ができる(法人税の10%(中小企業は20%)が限度)。
<算式>
(雇用者給与等支給額-基準雇用者給与等支給額)/基準雇用者給与等支給額
※基準雇用者給与等支給額とは平成25年3月31日以前直近事業年度の給与等支給額
<その他適用条件>
・雇用者給与等支給額が前事業年度を下回らないこと
・平均給与等支給額が前事業年度を下回らないこと
H25.4.1〜
H28.3.31までの間に開始する各事業年度


2.所得税

項目 内容 適用時期
最高税率の引き上げ(増税)  現行の所得税の税率構造に加えて、課税所得4,000万円超について45%の税率を設ける(現行は40%(1800万円超)が最高) H27年分以後
住宅ローン控除
(減税・延長)
 住宅を取得して、平成26年から平成29年までの間に居住の用に供した場合の税額控除を次のとおり延長する

居住年 借入
限度額
控除率 各年の
限度額
期間
H26.1〜
H26.3
2,000万円 1.0% 20万円 10年
H26.4〜
H29.12
4,000万円 1.0% 40万円 10年
H26.1.1〜
H35.12.31
(口座開設期間)
少額投資非課税(減税)  年100万円までの株式・株式投信への投資について、配当や譲渡益を5年間非課税とする(改正で口座開設期間延長) H26.1.1〜
H35.12.31
(口座開設期間)


3.消費税

項目 内容 適用時期
軽減税率
(検討)
平成27年10月に消費税率が10%に引き上げられることに伴い、品目によって軽減税率を導入することを目指す(平成26年4月に8%に引き上げられるときはの軽減税率導入は見送れました) H27.10.1以降


4.相続・贈与税

項目 内容 適用時期
最高税率の引き上げ(増税・新設) 相続財産6億円超の部分について55%の税率を設ける(現行は50%(3億円超)が最高) H27.1.1以降
基礎控除の見直し(増税)  相続税の基礎控除額を 3,000万円+(法定相続人の数×600万円)とする。
※現行は 5,000万円+(法定相続人の数×1,000万円)
H27.1.1以降
教育資金贈与の非課税(減税)  子・孫(30歳未満)の教育資金に充てるために金融機関に信託をした場合には、子・孫1人あたり1,500万円までの金額について贈与税を非課税とする。 H25.4.1〜
H27.12.31
相続時精算課税制度適用者の 拡充 (減税)  受贈者の範囲に、20歳以上である孫(現行は推定相続人のみ)を追加する。
 贈与者の年齢要件を60歳以上(現行は65歳以上)に引き下げる
H27.1.1以降
復興特別所得税の源泉徴収開始時期
 既報(2012.7 Topics)のとおり平成25年1月1日から平成49年12月31日までの25年間で生ずる所得について源泉徴収する際には、所得税の2.1%相当分である復興特別所得税を併せて徴収しなければならないこととなります(復興財源確保法28)。
 この源泉徴収の開始時期について、給与と報酬(税理士・会計士等)で取扱いが異なるので注意が必要となります。

1.給与にかかる復興特別所得税

 
給与所得に対する復興特別所得税の課税の判断について、国税庁が公表した『復興特別所得税(源泉徴収関係)Q&A』では、「毎年12月分給与を翌年1月に支払うこととし、25年1月の支払う予定の24年12月分の給与は復興特別所得税を源泉徴収する必要がありますか」という問いで「契約、慣習、株主総会の決議等により支給日が定められている給与は、その支給日がその給与の収入すべき時期とされています」との取扱いがあります。
 つまり平成23年12月末締め、翌月(平成24年1月)支払分の給与については、復興特別所得税を源泉徴収必要があるということになります。

2.報酬(カメラマン、デザイナー、税理士等)にかかる復興特別所得税

 税理士や会計士などの報酬に係る収入すべき時期は、人的役務の提供による収入金額については、その人的役務の提供を完了した日から復興特別所得税の源泉徴収が発生することとなります。
 ただし、人的役務の提供による報酬を期間の経過又は役務の提供の程度等に応じて収入する特約又は慣習がある場合におけるその期間の経過又は役務の提供の程度等に対応する報酬については、「その特約又は慣習によりその収入すべき事由が生じた日」で判定することとなります。
 つまり、契約等の事情があるものの、原則的には税理士報酬の役務提供完了日が25年1月以後の場合にはじめて、その役務提供に対する報酬について復興特別所得税が課され、源泉徴収義務者は所得税と併せて徴収しなければならないとのこととなります。

 例えば、契約が「月初から月末分の報酬を翌月15日払い
としている場合、1月15日の支払分(24年12月分(12/1〜12/31)に係る支払)は、24年12月分の役務提供完了日が24年12月末日であるため、復興特別所得税は課されないこととなります。

 また、契約が「16日から翌月15日分を翌月末日払い
にしている場合、1月末日の支払い分(24年12月16日から25年1月15日)は、役務提供完了日が25年1月であるため、24年分と25年分とを按分計算等することなく、報酬額全額に対して復興特別所得税が課されることとなります。