トピックス
  2015年度トピックス


即時償却(特別償却)の会計処理(15.12.01)

電気通信利用役務の提供に係る消費税の課税の見直し(15.11.01)

財産債務明細書の見直し(15.10.01)

法人住民税均等割の無償増減資の加減算措置(15.09.01)

結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置(15.08.01)

住宅取得資金に係る贈与税の非課税措置の拡充・延長(15.07.01)

マイナンバー制度運用開始について(15.06.01)

生産性向上設備投資促進税制(15.05.01)

欠損金の繰越控除制度の見直し(15.04.01)

法人税率の引下げ(15.03.01)

平成27年度税制改正大綱(自由民主党・公明党)(15.02.01)

番号法による個人番号の通知(15.01.01)


即時償却(特別償却)の会計処理
 今回は、「生産性向上設備投資促進税制」などの一定の要件を満たす減価償却資産を取得した場合に適用できる即時償却(特別償却)の会計処理についてご紹介させていただきます。

<即時償却とは>
 
 一定の要件を満たす減価償却資産を取得し事業の用に供した場合には、その取得費用の全てをその事業年度において費用処理することができます。これを即時償却といいます。 通常は耐用年数に応じた減価償却費を各期に費用計上していくこととなりますが、即時償却は取得時(事業供用時)に全額を費用処理できるため、取得した事業年度に大きな節税効果が見込めます。

<即時償却の会計処理>
 
 即時償却の会計処理には、次の3通りがあります。

(a) 通常方式 通常の減価償却と同じように処理する方法
 (借) 減価償却費 ××  (貸) 機械装置 ××
(b) 準備金方式 通常の減価償却計算から切り離して特別償却を処理する方法
 (借) 減価償却費 ××  (貸) 特別償却準備金 ××
(c) 利益処分方式 償却費を損益計算上の費用に計上しない方法
 (借) 未処分利益 ××  (貸) 特別償却準備金 ××

(a)、(b)、(c)のどの会計処理を選択しても、課税所得は同じになります。しかし、特別償却を損益計算書に費用として計上する上記の(a)と(b)の会計処理は、適正な期間損益計算を歪めることになります。

例えば、1千万円の設備を取得して即時償却に該当すれば、(a)、(b)の会計処理によると、 その1千万円を全て減価償却費として費用処理することになります。
  ↓
償却前の利益が1千万円未満だとすると、当期利益が赤字になってしまいます。
  ↓
法人税は0円になりますが、対外的には赤字決算となり、企業評価は下がってしまいます。

 特別償却による償却額は、租税政策上の優遇措置として損金算入される項目ですから、会計上は(c)の利益処分方式によることが適切です。監査法人の監査を受けている法人、連結グループに属している連結子会社等は、基本的に利益処分方式によることになります。

<利益処分方式による会計処理>
 
1)(当期)特別償却準備金の積み立て

(借) 繰越利益剰余金 ×× / (貸) 特別償却準備金 ××

 即時償却を適用する事業年度において、決算手続として、利益剰余金の減少により特別償却準備金を積み立て、その事業年度の所得計算上、法人税申告書の別表4にて減算調整を入れることにより損金算入を行います。なお、剰余金の処分には原則として株主総会の決議を要しますが、特別償却準備金の積み立てには決議は不要です。

2)(翌期)特別償却準備金の取り崩し

(借) 特別償却準備金 ×× / (貸) 繰越利益剰余金 ××

 法人が積み立てた特別償却準備金の額は、その積み立てをした事業年度の翌事業年度から、対象資産の法定耐用年数に応じて、法定耐用年数が10年以上のものは7年間、5年以上10年未満のものは5年間、それ以外のものは法定耐用年数に相当する期間に均等に按分して、益金の額に算入します。


 以上のように、法定監査の対象ではない中小企業においても、即時償却をする場合は、利益処分方式により当期利益を減少させることなく申告所得を減少させる会計処理をお勧めしております。

担当:橋本 拓也

電気通信利用役務の提供に係る消費税の課税の見直し
 今月は、平成27年10月1日から改正された電気通信利用役務の提供に係る消費税の課税の見直しについてご紹介させていただきます。

<概要>
 
 電子書籍・音楽・広告などについて、従来は国内事業者に対しては消費税が課税される一方、国外事業者については課税されず不平等な状態でした。平成27年10月1日より国外事業者が行う電気通信利用役務の提供に係る消費是地が課税されることとなり、経理方法が以下のように変更されることになります。

電気通信利用役務の提供
 
 改正の対象となる電気通信利用役務の提供とは、電子書籍、電子新聞、音楽・映像・ソフトウェアなどの配信、クラウドサービス、インターネット等を通じた広告の配信・掲載、ショッピングサイト・オークションサイトを利用させるサービス、電話や電子メールによる継続的なコンサルティングが対象とされています。
 電話、FAX、インターネット回線の利用など情報伝達を単に媒介するものやソフトウェアの制作、インターネット等を介して情報の収集や分析等の結果報告等が行われる役務の提供などは対象外とされています。

事業者向け・消費者向け電気通信利用役務の提供の範囲
 
 国外事業者が行う電気通信利用役務の提供を受ける場合に、事業者向け取引・消費者向け取引であるかにより申告・納税義務者、経理方法が異なります。このため、電気通信利用役務の提供に係る「役務の性質」や「取引条件等」から役務の提供を受ける者が通常事業者に限られるものを事業者向け取引、これ以外のものを消費者向け取引として判断する必要があります。
 ネット広告の配信サービス、アプリ・ソフトウェア等のオンラインショッピングモールなどは役務の性質から通常事業者向けとなりますが、電子書籍・音楽・映像の配信、中古品等のオークションサイトやクラウドサービスなどは個人消費者が契約することも考えられるため、契約書等の取引条件等を確認し判断する必要があります。
 たとえば、購入者が事業者か消費者かを問わずに同一の取引条件で購入できる場合には「消費者向け取引」に該当することになります。

登録国外事業者の確認
 
 国外事業者が登録国外事業者であるか、登録状況の確認が必要となります。登録国外事業者については、国税庁HPで確認することができ、請求書等には「登録番号」と「課税資産の譲渡等を行った者が消費税を納める義務がある旨」がそれぞれ記載されていることになります。

課税売上割合が95%以上の国内事業者の取扱い
 
 役務の提供を受けた国内事業者のその課税期間における課税売上割合が95%以上の場合は、提供を受けた役務の性質等に応じて以下のとおり取り扱われます。

国内事業者が、国外事業者(外国法人の日本支店含む)から提供を受けた場合
事業者向け取引 課税取引・・・特定課税仕入れはなかったものとされる
消費者向け取引 課税取引・・・登録国外事業者からの課税仕入れのみ仕入れ税額控除の対象
国内事業者が、国外事業者(外国法人の日本支店含む)に提供した場合
事業者向け取引 不課税取引
消費者向け取引 不課税取引

◆国外事業者から事業者向けサービスの提供を受けた場合、その役務の提供(特例課税仕入れ)は、当分の間なかったものとされます。したがって新たな事務負担は発生せず、「不課税取引」と同様に取り扱われ、改正前と経理方法は変わりません。

◆ 消費者向けサービスの提供を受けた場合には、サービスの提供を行った国外事業者が「登録国外事業者」であるかの確認を行い、登録国外事業者に該当する場合のみ仕入税額控除を適用することができます。この取引に係る消費税の申告・納税義務者は国外事業者となります。


【例】事業者向け取引
 国外事業者にサーバー利用料(請求金額100,000円)支払った場合

支払時 サーバー利用料 100,000 現金 100,000
決算時 仕訳なし        

【例】消費者向け取引
 登録国外事業者からデジタルコンテンツ(請求金額10,000円)を購入した場合

支払時 仕入 9,260 現金 10,000
  仮払消費税等 740    
決算時 仮払消費税等740円は仕入税額控除の対象
※10,000円×8/108=740円
※帳簿に登録国外事業者の登録番号の記載が必要となります

【例】事業者向け取引
 未登録国外事業者からデジタルコンテンツ(請求金額10,000円)を購入した場合

支払時 仕入 9,260 現金 10,000
  仮払消費税等 740    
決算時 仮払消費税等740円は仕入税額控除の対象外


課税売上割合が95%未満の国内事業者の取扱い
 
  役務の提供を受けた国内事業者のその課税期間における課税売上割合が95%未満の場合は、提供を受けた役務の性質等に応じて以下のとおり取り扱われます。
国内事業者が、国外事業者(外国法人の日本支店含む)から提供を受けた場合
事業者向け取引 課税取引・・・リバースチャージ方式
消費者向け取引 課税取引・・・登録国外事業者からの課税仕入れのみ仕入れ税額控除の対象
国内事業者が、国外事業者(外国法人の日本支店含む)に提供した場合
事業者向け取引 不課税取引
消費者向け取引 不課税取引

◆国外事業者から事業者向けのサービスの提供を受けた場合、その役務の提供(特例課税仕入れ)に係る消費税については、サービスの提供を受けた国内事業者に申告・納税義務が課される(リバースチャージ方式)ことになります。

【例】事業者向け取引
 国外事業者(課税売上割合80%)にサーバー利用料(共通対応100,000円)支払った場合

支払時 サーバー利用料 100,000 現金 100,000
決算時 雑損 1,600 未払消費税等 1,600
  ※1,600円は仕入税額控除の対象外となります     
※100,000×8%=8,000円(消費税)     
 8,000円×80%=6,400円(控除対象仕入税額)     
 8,000円△6,400円=1,600円

【例】消費者向け取引
 国外事業者から消費者向け電気通信利用役務の提供を受けた場合には、国内事業者の課税売上割りによらず、上述の課税売上割合が95%以上の場合と同様の仕訳となります。

担当:高橋 将史

財産債務明細書の見直し
 今月は平成27年度税制改正のうち、財産債務明細書の見直しによる、財産債務調書の提出制度の創設についてご紹介させていただきます。

<概要>
 
「財産債務明細書」が「財産債務調書」に名称が変わるとともに、提出基準及び様式が変更されます。

  改正前 改正後
名称 財産債務明細書 財産債務調書
提出基準 その年分の所得金額が
2千万円を超える者
その年分の所得金額が2千万円を超え、かつ、次の@またはAを満たす者
@その年12月31日に所有する財産の価額の合計額が3億円以上
Aその年12月31日に所有する※国外転出特例財産の価額の合計額が1億円以上
様式
(記載事項)
財産の種類、
数量及び価額
財産の種類、数量及び価額のほか、財産の所在、債務の金額、有価証券の銘柄など、※国外財産調書と同様の事項

※国外転出特例財産:所得税法に規定する有価証券等ならびに未決済信用取引等及び未決済デリバティブ取引に係る権利等
※国外財産調書を提出する方は、その財産債務調書には、国外財産調書に記載した国外財産に関する事項の記載は要しません。


過少申告加算税等の特例
 
  財産債務調書の提出の有無により、所得税及び相続税に係る過少申告加算税等を軽減または加重する下記の特例措置が新たに設けられます。
  1. 財産債務調書を提出期限内に提出した場合は、その記載のある財産または債務に関して所得税・相続税の申告漏れが生じた場合であっても、過少申告加算税等が5%軽減されます。
  2. 財産債務調書を提出期限内に提出しなかった場合または記載すべき財産または債務の記載がない場合に、その財産または債務に関して所得税・相続税の申告漏れが生じたときは、過少申告加算税等が5%加重されます。
 この改正は平成28年1月1日以降に提出すべき財産債務調書より適用となるため、財産債務調書の最初の提出期限は、平成28年3月15日となります。

担当:橋本 拓也

法人住民税均等割の無償増減資の加減算措置
  平成27年度税制改正における、法人住民税均等割の税率区分の基準となる資本金等の額については以下の2つの改正がありました。
  1. 資本金等の額が資本金と資本準備金の合計額を下回る場合には、当該資本金と資本準備金の合計額を均等割の税率区分の基準として取り扱う措置
  2. 均等割の税率区分の基準となる資本金等の額について、無償増減資の額を加減算する措置
 上記の改正の内、今月は(2)の無償増減資の額を加減算する措置についてご紹介いたします。

<概要>
 
  法人住民税(道府県民税・市町村民税)の均等割の税率区分の基準は、原則、法人税法の上の資本金等の額とされています。
 平成27年度の税制改正により、均等割の税率区分の基準である資本金等の額から無償減資に係る一定の欠損てん補額を減算できることとなり、無償増資を行った場合には、その増資相当額を資本金等の額に加算することとなりました。
 減算対象となる一定の欠損てん補額等は、以下のとおりとなっています。

契約の締結年 対象期間 対象となる金額
無償増資
(加算)
H22.4.1
以後
・利益準備金またはその他利益剰余金による無償増資を行った場合の、その増資額
無償減資
(減算)
H13.4.1〜
H18.4.30
・資本又は出資の減少による資本の欠損のてん補に充てた金額
・資本準備金による資本の欠損のてん補に充てた金額(旧商法ベース)
H18.5.1
以後
・剰余金による損失の補填を行った場合の、その損失の填補に充てた金額(資本金の額又は資本準備金の額を減少し、その他資本剰余金として計上してから1年以内に損失の補填に充てた金額に限る)

 上記のとおり、改正前は欠損てん補のための無償減資を行った場合でも、税務上の資本金等の額の減少を認識しませんでしたが、平成27年4月1日以後開始の事業年度においては、上記の対象期間のように過去の欠損てん補金額も資本金等の額に反映できることとなりました。


<提出書類等>
 
 上記の制度の適用の為には無償減資に係る欠損てん補額についてその内容を証する書類を添付した申告書を提出した場合に限り減算できることとされています。


<適用開始期間>
 
 当改正は、平成27年4月1日以降開始する事業年度から適用開始となります。

担当:櫻井 賢宏

結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置
 今回は、平成27年度税制改正のうち、「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」についてご紹介させていただきます。

<概要>
 
 平成27年4月1日から平成31年3月31日までの間に、20歳以上50歳未満の子・孫(受贈者)が、結婚・子育て資金に充てるため、受贈者の直系尊属である父母・祖父母から結婚・子育て資金を一括して贈与を受けた場合に、子・孫ごとに1,000万円までの金額について贈与税が非課税となります。※結婚関係で支払われるものについては300万円が限度額となります。
 この制度を利用するためには、金融機関で結婚・子育て資金口座の開設を行い、その金融機関を経由して、結婚・子育て資金非課税申請書を提出する必要があります。
 また、対象となる費用の支払いを行った場合にも、領収書などを提出期限までに金融機関へ提出する必要があります。

<結婚・子育て資金の範囲>
 
 次のような費用が、結婚・子育て資金として非課税の対象となります。

(1) 結婚に際して要する費用(300万円限度)
 @ 挙式や結婚披露宴を開催するために要する挙式代、会場費
  ※結納、婚約指輪代、新婚旅行代などは対象外となります。
 A 結婚を機に移り住む新たに借りた物件の家賃、敷金、共益費、礼金、仲介手数料、更新料
  ※駐車場代、光熱費、家具、家電などは対象外となります。
 B 移り住む住居先に転居するための引越し費用

(2) 妊娠、出産及び育児に要する費用
 @ 不妊治療、妊婦検診に要する費用
 A 分娩費等、産後ケアに要する費用
 B 子の医療費、幼稚園・保育所等の保育料(ベビーシッター代を含む)など
  育児に伴って必要なる費用
 ※子が未就学児(小学校入学前)であることが条件となります。

<契約の終了>
 
 結婚・子育て資金口座の契約は次の場合には終了することになります。受贈者が50歳に達した場合に口座に残高があるときは、贈与税の対象として課税を受ける可能性がありますので注意が必要です。

 (1) 受贈者が50歳に達したこと
 (2) 受贈者が死亡したこと
 (3) 口座の残高が0円になり、口座を終了させる合意があったこと

 贈与者が死亡した場合に口座に残高がある場合には、受贈者は相続により取得したものとされ、相続税の課税の対象となります。ただし、孫等への贈与の場合であっても2割加算の対象にはなりません。

 本制度は、原則として1度預入を行うと、贈与者が払い出しを行うことが出来ません。一括贈与制度も複数存在するため、どの制度が有利になるかよく検討してからご利用ください。

担当:高橋 将史

住宅取得資金に係る贈与税の非課税措置の拡充・延長
 今月は「平成27年度税制改正」のうち、住宅取得資金に係る贈与税の非課税措置の拡充・延長について紹介させて頂きます。

<概要>
 
 20歳以上で所得金額が 2,000 万円以下の子や孫が、両親や祖父母(直系尊属)から自宅の購入や建築のための現金の贈与を受け、実際にその現金を自宅の購入・建築資金に充て、贈与を受けた翌年3月15日までに居住した場合に、住宅取得資金の贈与税の非課税特例が適用できます。
  今回の税制改正で、贈与税が非課税となる限度額が拡大され、適用期限が平成31年6月30日まで延長されました。

<適用範囲>
 
 非課税となる限度額の範囲については、以下の通りです。

■受贈者ごとの非課税限度額の範囲

契約の締結年 消費税率10%が適用される場合 左記以外の場合
※良質な住宅 一般の住宅 ※良質な住宅 一般の住宅
平成27年以前 −−− 1,500万円 1,000万円
平成28年1月 〜28年9月 1,200万円 700万円
平成28年10月 〜29年9月 3,000万円 2,500万円 1,200万円 700万円
平成29年10月 〜30年9月 1,500万円 1,000万円 1,000万円 500万円
平成30年10月 〜31年6月 1,200万円 700万円 800万円 300万円
※良質な住宅 = 耐震・省エネ・バリアフリーの基準を満たした住宅

■東日本大震災の被災者が住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税限度額

契約の締結年 消費税率10%が適用される場合 左記以外の場合
※良質な住宅 一般の住宅 ※良質な住宅 一般の住宅
平成28年9月以前 −−− 1,500万円 1,000万円
平成28年10月〜29年9月 3,000万円 2,500万円 1,500万円 1,000万円
平成29年10月〜31年6月 1,500万円 1,000万円 1,500万円 1,000万円
※良質な住宅 = 耐震・省エネ・バリアフリーの基準を満たした住宅


※受贈者ごとの非課税限度額は、新築等をする住宅用の家屋の種類ごとに、受贈者が最初に非課税制度の適用を受けようとする住宅用の家屋の新築等に係る契約の締結日に応じた金額となります。

※消費税率が引き上げられる平成29年4月以後の引渡しには、新税率10%が適用されます。ただし、平成28年9月末までに請負契約を締結すれば、旧税率8%が適用されます。

 相続対策をお考えの方にとっては、どのタイミングで贈与することがよいか、検討する必要があるかと思います。

担当:橋本 拓也

マイナンバー制度運用開始について

今月は平成27年10月から通知が始まります、マイナンバー制度(社会保障・税番号制度)についてご紹介いたします。

マイナンバー制度(社会保障・税番号制度)とは
 
 マイナンバー制度(社会保険・税番号制度)とは、国民一人ひとりに対し「個人番号」、法人等に対し「法人番号」が割り振られ、これらの個人番号、法人番号の活用及び保護を図ることを目的として導入された制度です。
 マイナンバー制度の導入により、税や社会保障が一つの番号で管理されますので、行政の業務効率化が進み行政手続きが簡素化することや、公正・公平な社会を実現するための社会基盤となることが期待されています。

今後のマイナンバーの利用について
 
 マイナンバーは今後事業を行う上でさまざまな場面で利用しなければなりません。具体的には以下のとおりです。※一部の代表的なもののみ記載しています。

【1】税分野
 
@ 源泉徴収票、給与支払報告書への記載  
 平成28年度分の源泉徴収票、給与支払報告書から各従業員(パート・アルバイトも含む)、配偶者、扶養親族のマイナンバーの記載が必要となります。下記が様式となります。

A 各種支払調書
  平成28年度分の各種支払調書におきましてもマイナンバーの記載が必要となります。

【2】社会保障分野
 
@ 雇用保険、健康保険・厚生年金各種被保険者資格取得届や資格喪失届、報酬月額算定基礎届など   平成28年1月1日以降提出分からマイナンバーの記載が必要となります。


 <適用時期>

 マイナンバーの交付は平成27年10月から通知が始まりますが、マイナンバーの利用開始は平成28年1月からとなります。

<事前準備について>

 事業者の方は今後各種労働保険、社会保険の手続時や年末調整時等さまざまな場面でマイナンバーを利用しなければなりません。早めに各従業員から本人確認を行ったうえでマイナンバーを取得し、事前準備を行っていただきますようお願いいたします。

担当:櫻井 賢宏

生産性向上設備投資促進税制
今回は、生産性の向上・改善のための設備投資を行った場合に適用できる「生産性向上設備投資促進税制」についてご紹介させていただきます。

<制度の概要>
 
 本制度は、先端設備の導入を進め、企業内部における設備の新陳代謝を活性化するとともに、民間投資を活性化することを目的に平成26年度税制改正で創設されました。平成25年度税制改正で創設された生産等設備投資促進税制とは異なり、法人全体として設備投資額が増加していなくても、取得した設備ごと適用対象となるかを判定するため、適用しやすい制度となっています。一定の要件に該当する場合には、取得した日に応じて次の特別償却又は税額控除を受けることができます。

取得・供用の時期 H26.1.20〜H28.3.31 H28.4.1〜H29.3.31
特別償却 即時償却 50%の特別償却(建物・構築物は25%)
税額控除 5%(建物・構築物は3%) 4%(建物・構築物は2%)

なお、税額控除は法人税額の20%が限度となります。

対象者
 
 青色申告を提出する法人・個人が対象になります。業種の限定はされておらず、非製造業など全ての業種で適用が可能です。

適用要件
 
 適用対象となる設備は@先端設備(A類型)、A生産ラインやオペレーションの改善に資する設備(B類型)のいずれかに該当し、最低取得価額以上のものである設備が対象となります。

【A類型:先端設備】
 先端設備は@最新モデル要件と、A生産性向上要件がありますが、この要件はメーカーが判定し、工業会がそれをチェックすることとなっています。このため、優遇制度を利用する場合には、事前にメーカーに適用対象となるか確認し、証明書を発行してもらうことで本制度の適用を受けることができます。

【B類型:生産ラインおよびオペレーションの改善に資する設備】
 A類型のようにメーカーは証明書を発行は行わないため、設備を導入することで投資利益率が年15%以上(中小企業者等は5%以上)増加するという計画書を納税者側が作成し、経済産業局へ確認を受けることが必要になります。経済産業局の確認は、設備の取得前に受けなければならないとされており、早めの対応が必要になります。(確認を受けるために提出から1ヶ月程度必要です)

【最低取得価額】
 上記の2類型のいずれかに該当し、さらに次の最低取得価額以上のものの取得が必要になります。設備の種類ごとに金額が異なり、また種類によって単品の価額と年間合計額の判定が必要となります。

設備の種類 最低取得価額
機械装置 単品160万円以上
工具および器具備品 単品120万円以上(単品30万円以上かつ合計120万円以上を含む)
建物・構築物 単品120万円以上
建物附属設備 単品120万円以上(単品60万円以上かつ合計120万円以上を含む)
ソフトウェア 単品70万円(単品30万円かつ合計70万円以上を含む)

 本制度は、A類型はメーカーからの証明書の交付を受けることで比較的容易に適用を受けることが可能です。また、B類型は店舗や工場などの単位で適用を受けることが想定されますが、建物や構築物など金額の大きいものを対象にすることになり、大きなメリットを受けることが可能ができます。設備投資をご検討されている場合には是非ご活用ください。

担当:高橋 将史

欠損金の繰越控除制度の見直し
 平成26年12月30日に発表されました「平成27年度税制改正大綱」のうち、今月は欠損金の繰越控除制度の見直しについて紹介させて頂きます。

概要
 
 欠損金の繰越控除制度は、過去の事業年度において生じた欠損金を、その事業年度の翌事業年度以降に繰り越し、所得金額から控除する制度です。
 今回の改正により、大法人の欠損金の繰越控除制度の所得制限が、現行の80%から65%、さらに50%へと2段階で引き下げられます。また、欠損金の繰越期間が10年(現行9年) に延長されます。
@ 繰越控除限度額の引き下げ
(1)青色欠損金の繰越控除制度、災害による欠損金の繰越控除制度の控除限度額を、現行の100分の80相当額から次の通り段階的に引き下げる。
 イ. 平成27年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始する繰越控除をする事業年度について、その繰越控除前の所得の金額の100分の65相当額とする。
 ロ. 平成29年4月1日以後に開始する繰越控除をする事業年度について、その繰越控除前の所得の金額の100分の50相当額とする。



引用: 経済産業省関係資料『平成27年度税制改正について』


(2)法人の設立等の日から以後7年を経過する日までの期間内の日の属する各事業年度については、控除限度額を所得の金額とする。
※注:中小法人等については、現行のまま変更なし。

A繰越期間の延長
 青色欠損金の繰越期間、災害による損失金の繰越期間を、平成29年4月1日以後に開始する事業年度において生じた欠損金額について10年(現行9年)に延長する。

⇒ 中小法人等については、従来どおり控除限度額が所得の100%のまま、欠損金の繰越期間が延長されるため、有利な改正となっています。

担当:橋本 拓也

法人税率の引下げ
  平成26年12月30日に「平成27年度税制改正大綱」が発表されましたが、今月はその中の法人税率の引下げについてご紹介いたします。

概要
 
 現行25.5%の法人税率が平成27年4月1日以降開始する各事業年度において23.9%に引き下げられることとなりました。
 また、法人税率引下げに際し地方税の税率も変更されます。そのため、資本金1億円超の大法人に関しては地方税を含めた実効税率が平成27年度は32.11%、平成28年度は31.33%となります。
 中小法人に関しては現行800万円以下の所得に関しては15.0%の軽減税率の適用の特例が認められておりますが、その適用期限が2年間延長されました。800万円超の所得の部分に関しては上記の法人税率となりますので、平成27年度より23.9%に引き下げられます。


※経済産業省 「平成27年度経済産業関係税制改正について」参照


適用時期

 上記でも記載しましたが、法人税率の引下げが適用されるのは平成27年4月1日以降開始する各事業年度からとなります。

担当:櫻井 賢宏

平成27年度税制改正大綱(自由民主党・公明党)
  自由民主党、公明党両党が平成26年12月30日に「平成27年度税制改正大綱」を発表しました。下記に税目ごとにポイントをまとめました。

<1.法人税 >
 
 項目 内容 適用時期
法人税率の引下げ (減税) 法人税率を引下げるとともに、中小法人の軽減税率を2年間延長する(所得800万円まで15.0%)。

  現行 27年度 28年度
法人税率(大法人) 25.5% 23.9%
地方税含めた実効税率 34.62% 32.11% 31.33%

※上記法人実効税率引下げに伴い、地方税の税率も変更されます。
H27.4.1以後開始事業年度
欠損金の繰越控除の見直し (増税) 欠損金の繰越控除制度について、控除限度額を段階的に縮小するとともに、その繰越期間を延長する。また、経営再建中の法人及び新設法人について、7年間は所得金額の100%控除を認める特例を新設する

  現行 27年〜28年度 29年度以降
控除限度額 所得の80% 所得の65% 所得の50%
繰越期間 9年 10年

※中小法人については、現行と変わらず所得金額の100%について控除が認められる(平成29年度以降に生じる欠損金については9年から10年に延長する)
H27.4.1以後開始事業年度
所得拡大促進税制の拡充 (減税) 雇用者給与等が一定割合以上増加した場合に、増加分の10%について税額控除できる(法人税額の10%(中小法人20%)が上限)制度の雇用者給与等支給増加割合の要件を以下のとおり見直す。

  25
年度
26
年度
27
年度
28
年度
29
年度
現行 2% 2% 3% 5% 5%
27年
改正
大法人 2% 2% 3% 4% 5%
中小法人 2% 2% 3% 3% 3%


H28.4.1以後開始事業年度分の改正


<2.所得税 >
 
 項目 内容 適用時期
NISAの限度額
引上げ(減税)
非課税口座に受入可能な上場株式等の取得対価の限度額を120万円に引上げる。 H28年分以後
ジュニアNISAの
創設 (新設・減税)
未成年者口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置を創設。毎年80万円を上限とする。 H28年分以後


<3.消費税 >
 
 項目 内容 適用時期
消費税率の引上げ(増税) 消費税率の10%への引上げの施行日を平成29年4月1日とする。 H29.4.1以後


<4.相続・贈与税>
 
 項目 内容 適用時期
住宅取得資金贈与の非課税措置の拡充・延長 (延長・減税) 直系尊属からの贈与で、居住用家屋の新築・取得・増改築等用の資金を取得した場合で、一定の要件を満たすときは、下記のとおり贈与税が非課税となる。

  消費税10%適用者 それ以外の者
  耐震等 一般住宅 耐震等 一般住宅
平成27年     1,500万円 1,000万円
H28.1〜H28.9     1,200万円 700万円
H28.10〜H29.9 3,000万円 2,500万円 1,200万円 700万円
H29.10〜H30.9 1,500万円 1,000万円 1,000万円 500万円
H30.10〜H31.6 1,200万円 700万円 800万円 300万円

※上記法人実効税率引下げに伴い、地方税の税率も変更されます。
H31.6.30まで延長
結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置の創設 (新設・減税) 直系尊属が子や孫の結婚・出産・育児資金を贈与した場合、1,000万円まで非課税とする(結婚資金は300万円まで)。

受贈者 20歳以上50歳未満
贈与者 直系尊属(受贈者の親、祖父母)
金銭等の拠出先 金融機関の贈与者名義の口座
使用目的 受贈者の結婚、出産、子育て資金
H27.4.1からH31.3.31まで


<5.地方税 >
 
 項目 内容 適用時期
法人住民税均等割区分の基準変更 法人住民税均等割の判定基準となる「資本金等の額」を「資本金と資本準備金の合計額」とする。
※改正前は自己株式の取得等により「資本金等の額<資本金+資本中備金」となるケースがあったため改正が行われた。
H27.4.1以後開始事業年度
番号法による個人番号の通知
  平成25年5月24日に「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(通称 番号法・マイナンバー法)」が成立し、平成28年1月より個人番号の運用が開始されます。平成27年10月より個人番号の通知が予定されており、今回は「通知カード」および「個人番号カード」についてご紹介させていただきます。

番号法の概要

 マイナンバーは、住民票を有する全ての方に1人1つの12桁の番号を付し、社会保障、税、災害対策の分野で効率的に情報を管理し、複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報であることを確認するために活用されるものです。この制度の導入により「公平・公正な社会の実現」「国民の利便性の向上」「行政の効率化」の3つの効果が期待されています。

個人番号の通知

 平成27年10月ごろに個人番号を記載した「通知カード」の郵送が予定されており、この通知カードは、行政手続や勤務先で必要になります。また、通知カードとともに個人番号カードの交付申請書が郵送され、平成28年1月以降に各市区町村で手続きすると「個人番号カード」の交付を受けることが可能です。個人番号カードには、顔写真などが記載される予定であり、身分証明書として広く利用できるとされています。個人番号カードの取得は強制されるものではありませんが、利便性の向上からより多くの人に取得をしてもらいと政府は考えているようです。

 通知カードと個人番号カードの様式案は次のイメージになります。

通知カードと個人番号カードの様式案

 今後、番号法の施行にともない事業主が従業員等に通知カードの適切な管理を行うよう指導する場面が出てきますので、事前に準備を進めるようお願い致します。

担当:高橋 将史