研究開発税制の拡充について
平成30年12月14日に「平成31年度税制改正大綱」が発表されました。今回はその中より、「研究開発税制の拡充」についてご紹介いたします。
研究開発税制とは
研究開発税制は、次のとおり4つの制度によって構成されています。
① 試験研究費の総額に係る税額控除制度【総額型】
② 中小企業技術基盤強化税制
③ 特別試験研究に係る税額控除制度【オープンイノベーション型】
④ 試験研究費の額が増加した場合等の税額控除制度【増加型・高水準型】
※①と②は同時に選択することはできません(選択適用)。
それぞれの税額控除制度において、所得の計算上損金の額に算入される試験研究費の額がある場合、その事業年度の法人税額から、試験研究費の額に税額控除割合を乗じて計算した金額を控除することができます。
試験研究費の範囲
研究開発税制において対象となる試験研究費は、以下の要件を満たすものに限られています。
- 製品の製造、技術の改良・考案・発明に係る試験研究のために要する費用
- 新サービスの研究※のために要する費用
… 主に原材料費・(専門的知識をもって当該試験研究に専ら従事する者の)人件費・委託費・そのほかの経費
※新サービスの研究とは「対価を得て提供する新たな役務の開発に係る試験研究」をいいます。単に新たなサービスを始めるというものではなく、「観測」「分析」「設計」「適用」というプロセスを経た、研究開発の手法に基づくサービス開発が対象となります。
(例=自然災害予測サービス・農業支援サービス・ヘルスケアサービス・観光サービスなど)
改正案
今回の改正案では、以下の項目で見直し・拡充が行われることとなっています。
1.控除上限の引き上げ
現行 | 改正案 | |
① 【総額型】
② 中小企業技術基盤強化税制 (選択適用) |
法人税額の25%
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法人税額の25%
(ベンチャー企業※は40%)
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③ 【オープンイノベーション型】 | 法人税額の5% | 法人税額の10% |
④ 【増加型・高水準型】 | 法人税額の10% | 法人税額の10%
【高水準型】の廃止 |
※この場合の「ベンチャー企業」とは①設立10年以内で、②当期において翌期繰越欠損金を有する法人
2.控除率の上乗せについて
A)①【総額型】において、「試験研究費が増加した場合」に有利性を与えるため、試験研究費の額が増加した場合の控除率を引き上げ、試験研究費の額が減少した場合の控除率が引き下げられます。
B)①【総額型】および②【中小企業技術基盤強化税制】において、「売上高試験研究費割合」が一定の割合を超えた場合に、控除率が上乗せされる2年間の時限措置が新設されます。
研究開発への投資の質と量の向上を促すため、研究開発などを行う一定の中小企業等にとって、有利な改正となっています。
担当:橋本 拓也